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17歳の寄り道
第16章 【千晴編】最初で最後の日
「――――あ」

藤田先生の指が止まった。
何かに気付いたような顔をしている。突然のストップに戸惑いながら、私は先生の指先に視線を移した。

もうすぐ、来るとは思っていたけど、少し早めに月のものが来てしまったようだった。


「………どちらにせよ、今日は無理だな」


先生が手を洗いに立つ。
私はまだ甘い吐息が残ったまま、重たい体を起こして、一応準備していたナプキンをバッグの中から取った。
周りを確認したが、シーツは汚していないし、穢したのは先生の指だけだったようだ。
先生が戻る前に再び下着をつけ、ワンピースを着る。

……先生は、私とセックスしたかったのか、したくなかったのか、結局どっちだったんだろう。

何を考えているのかが見えなくて、辛いけど知りたくて、こんな男にはまってもきっと何もいい事がないと思うのに抜け出せない。

ベッドの程良い柔らかさとひんやりしたシーツの感触に、目を閉じて身を預ける。
すると藤田先生が戻ってきて、私に背を向け服を着始めた。

「……帰るんですか?」
気だるく横たわったまま尋ねれば、先生は私の近くに腰を落とす。

「須賀が帰りたいなら帰るよ」

帰りたいわけないのに……。
近くにあった分厚い手に、自分の手をそっと重ねてみた。

「一緒にいたいです。夜まででいいので…」
「…そうか」
「生理が終わったらまた、会ってほしいです」

先生にしてみれば、今日のこの時間を私にくれたことで約束を果たした事になっているのかもしれないけれど、まだ、先生と全然つながってない。
藤田先生は肩を落として溜息をつき、重ねた私の手を握るような仕草をした。

「……お前は、手に入らない物が欲しいだけだろう。大した経験もないのだから、俺を満足させる事もできないだろうし、俺には何のメリットもない。風俗に行く方が余程気楽だ」

冷たい言葉が並ぶが、全然耳に入らない。
じゃあ、なぜそんなに優しく手を握るの?

「風俗行ってるんですか?奥さんは…?」

素直な疑問を口にすると、藤田先生は訝しげな目を私に向けた。

「もののたとえだ。俺にとってお前とのセックスなど価値がないと言っているのがわからないのか」
「…………」

わからない。
そんな言葉で牽制したって、今握りしめている先生の手は温かくて優しいよ。

じゃあ、先生は何でここにいてくれるの?
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