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難問 -兄妹の領域境界-
第15章 音楽の鑑賞と実技
舞台の左袖で順番を待つ。
目の前には今音を奏でている人の背中が見える。

なのに、かつてないくらい気持ちでこの場にいる。
怒り、悲しみ、くやしさそんな負の感情が胸をうずめく。

体型が変わり新調したドレス。
細い肩紐にエンジ色のシンプルな床につくくらいのロングドレス。
体型に合わせてオーダーしたため、吸い付くように体のラインをあらわにするそのドレスは飾りがほとんどないシンプルさ故着ているものの魅力を引き立てる。

そのドレスも、この気持ちを引き上げることはできなかった。

隣にいる兄をこっそり睨む。
全部、何もかもこの人のせい。

視線は絡まない。
兄も普段イヤミなくらい余裕のあ笑みをうかべる悠然とした態度をとっている人と同一人物とは思えない。
片隅にそっと体を預け、舞台を見ているのか見ていないのか、愁いを帯びた雰囲気でたたずむ。

(この状態で、二人で舞台に立つのか・・・)

今日は師事している先生の発表会。
高校1年の未由はまだ毎週レッスンに通っているが、兄は受験を控えているため連弾のみの参加だ。

発表会では基本ソロで1~2曲弾くのが一般的だが、佑人と未由は兄妹ということもあり、毎回連弾曲も弾く。

ここ数年の発表会では、連弾が楽しみで仕方なかった。
曲の難易度が増した。
同じ音を一瞬の差で弾かなければいけないくらいに。
それは、兄に寄り添うくらい近づかなければ為しえないこと。
ただでさえ、連弾はいつもの距離よりかなり近いのに。

中学生のころから、近さを意識するようになった。
会話ができない中、視線をあわせてでお互いのタイミングを合わせる。
弾いている最中は、全身で兄を意識し無言の指示を逃さないように。

テンポが走ると怒られ、苦手なところがうまくいくと優しいまなざしを向けてくれる。
弾いている音域に重なる部分があるため、途中で兄の右手の指が私の左手の指を掠めることがよくある。
その瞬間発生する甘い感覚は、曲へのエッセンスとなる。
そして、クライマックスでは一瞬視線を絡め、二人同時に終焉へと向かう。

中学生のころとは違う、心に兄に対する淡い感情が生まれてから初めての連弾。
また兄のそばでいる時間が増え、ほのかな幸せを感じることができる貴重な期間だった。

(はずなのに・・・・・。何でこんなことになっちゃったの)

未由の意識は過去へとさかのぼっていった。
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