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難問 -兄妹の領域境界-
第23章 不等価交換
「ご無沙汰しています」

俺がレッスンに来るのは、2か月ぶりだろうか。
大学に入学し、慌ただしくしている中なかなか来るタイミングがなかった。

「久しぶりだね、佑人ももう大学生か」

初老という表現が近いか、どこか人懐こさを感じさせつつ澄んだ空気をまとう。
男性のピアノの教師は珍しい部類だ。
かつては俺が通っていた大学で教授として活躍していた。

実は、県外や飛行機を使ってまでレッスンを受けたいと言われるほどの実力者であることを知ったのは最近だった。
近所ということもあり、祖父の時代から付き合いがあったため歩いて通えるピアノ教室だからと理由で通っていると思っていた。

家から未由と俺が歩いて行ける範囲のピアノ教室

それは確かに間違いではなかったが、1からこの教室で習ったのは自分と未由だけだった。
たいていは、別の教室から紹介され移ってくる生徒ばかりだった。

たまたま未由が「習いたい!」と言ったとき祖父が居合わせ、そういえばと思い出したように電話をしていた。

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