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難問 -兄妹の領域境界-
第23章 不等価交換
「はい、慣れないことが多くレッスンになかなか来ることができませんでした」

「はは、本当に成長したものだな。昔は『うっせーよじじぃ』なんて言ってたのにな」

「お恥ずかしい限りです、と言っても普段はそんな感じですが」

「確かに未由ちゃんと来るときは素が出てるな」

「それは・・・」

それは、なんとなく未由に丁寧にしゃべっている姿を見られたくない、そんなくだらない理由だと言ったら笑われそうだ。

「練習のほうは時間取れているのかね」

「それがなかなか、大学の空き時間に練習できればいいんですが、学部外なので」

少し先生が目を開いた後、ニヤリと俺を見る。
俺の考えはお見通しというわけか。昔からこの先生には本当にかなわない。

「それで僕のところにお願いに来たんだね?」

「ご明察の通りです、先生にはかなわないですね」

そう、今日はレッスンとは別にもう一つ目的をもってここに来た。

今通っている大学には芸術学部があり、音楽科にはその学部生のみが使用できるピアノ室がある。
レッスンで使用する他、生徒の練習のために用意されている2フロアにわたる40室近くある個室だ。
鍵管理されており、音楽科の生徒しか利用できない設備となっている。

そこを学部が違う俺が使うことができるよう、便宜を図ってもらいたいという内容だ。
今でも、臨時で教壇に上ることがある彼であれば可能だと踏み願い出る予定だった。

「素直に音楽科へ行けばよかったものを」

これは何度も言われていた。選択肢に並ばなかったといえば嘘になるが・・・。

「俺には分不相応ですよ、それに職業としてではなく純粋に楽み続けたいですし」

「そういわれてしまうと何も言えないじゃないか」

「だまだ教えていただきたいことは多々あるので、これからはもう少し頻繁に伺います」

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