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難問 -兄妹の領域境界-
第3章 中学校の小テスト
1年の廊下を歩いていると、やはりすれ違う人は固まっている。

そんな姿をみてに苦笑しつつ、兄について歩く。

私の教室の入り口にたどり着き、中に入って振り返る。

「送ってくれてありがとう!」

兄に届くくらいの声でお礼を言う。
迷うことなく、私の教室を目指して歩いて行った兄はあらかじめ場所を確認していてくれたのであろう。
目立つのにわざわざ教室の入り口まで送ってくれた。
私はこんなに優しい人を他に知らない。その優しさは私の笑顔を引き出す。

(絶対口にはしないけどね・・・・)

「お前、寄り道しねぇでさっさと帰れよ」

ガタン

私のお礼には答えず脅すような声で言い放つ。
入口の近くの席に座っていたクラスメイトが、驚きを隠さず蒼白になっている。
大きめの声だったせいか教室中の会話が止まる。

「はーい」

私の返事を聞くと、そのまま兄は戻っていく。

その姿を見つめていると、すれ違う人は目線を合わせず足早に通り過ぎる。
二人で並んでいた時の反応との違いに、いったい私たちはみんなの目にはどう映っているんだろうと半ばあきらめ気味にため息をつく。

幼いころの一番古い記憶があるときから、兄は私を大切にしてくれている。
そんな兄が大好きで、常に兄のそばをついて歩いた。
そんな私を一切邪険にせず、いつも通り優しくしてくれた。
周りからどう見えたかは別として・・・

兄のそば以外にこんなにも心地よい場所はない。
自分を偽らないまっすぐな兄に対して、嘘で塗り固められた自分。
本当の自分を晒せるのは、私から新しい感情を引き出せるのは兄だけ。

視界から兄が消えたことを確認し、自席に戻る。

5時限目は小テストがある。
テキストを開き、念のため出そうな問題を確認する。

兄と同じ高校に行くために、少しでも長い時間そばにいるために、難しい問題でも解けるようにしておかなければならない。

気持ちを切り替え、問題を解き始めた。



Fin
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