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おじさまと咲姫
第32章 意表
「違いますっ。その時ちょうど、サークルの他のメンバーが後ろから来て-」
-それで。
咲姫は右頬に指を伝わせた。
ゆっくりと近付いていた彼の顔。
息を呑み、されるがままになっていた。
動くなんて、出来なかった。
もうあと少し-覚悟を決めた時、賑やかな笑い声が耳に届いた。
どうやら自分達よりも後に海に向かって来ていた、メンバー達のようだった。
その声にほっとし、緊張の糸が途切れた。
声のする方を向いた瞬間。
横顔に、柔らかなものを押し当てられた。
それはほんの一瞬の出来事だったけれど、確かに頬に触れていった。
驚いて彼を見ようした咲姫の耳朶に、温かな吐息がかかった。
増々びっくりして固まっていれば、波の音に紛れて、彼の囁きが聞こえた。
『あとちょっとだったのに』
-残念、と。





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