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淫欲の果てに。人妻・怜香32歳の記録
第2章 漆黒の扉に導かれて
若いバーテンダーに出されたのは、小さなグラスに入った白いカクテルだった。
「ホワイトレディというカクテルです。甘さと爽やかさが半々くらいのお酒ですよ。」

初めて聞く名前のそのカクテルを一口飲むと、ほんのりした甘さと爽やかなレモンの酸味が交互にやってきて、とても満たされた気分になる。

「……とってもおいしいです。」
「お口に合うようでしたら良かったです。あ、お名前お聞きしても大丈夫ですか?僕は皆瀬(みなせ)と言います。」
「あ、私は、篠(しの)怜香です。」
「ありがとうございます、怜香さん。お酒はお好きなほうですか?」
「私、もともとお酒は好きなんですけど、最近は家と職場を行き来するだけの日が多くて。今日は久しぶりに友人と食事がてら飲んできた帰りなんです。」

皆瀬という名前の茶色がかった髪色の彼はバーテンダーにありがちな鼻につくような雰囲気もなく、とても話しやすい。他愛のない話をしながら、今日の一品として出された菜の花とソーセージのソテーをつまみ、カクテルを飲む。香ばしいバターと菜の花がうまく絡み合い、カクテルがすすむ。

2杯目には辛口のお酒をオーダーすると、フェイマスグラウスというウイスキーが出された。辛味の中にもたまにほのかな甘味が香るお酒だ。


グラスを傾けてまたウイスキーを口に含もうとしたその時、出入り口の扉が開き、1人の男性が静かに店内へと入ってきた。

「あ、冬木さん。いらっしゃいませ、お好きなお席へどうぞ。」
皆瀬さんが出迎えると、その男性はカウンターに近づき、私の左隣へと座る。
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