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神は現で夢を見る
第3章 凪と海
それからと言うもの、海は、毎日晴明屋敷に訪れていた。
無論、可愛い凪に会う為に相違無い。
二人で庭を散策してみたり、手遊びをしてみたり、晴明と海の晩酌の相手をしたり。
二人は急速に仲良くなって行った。
それも当たり前か。
凪の魂は、海が愛した『凪』の魂。
『凪』が愛した海が今の凪の目前で、微笑み、優しく凪に触れるのだ。
彼を意識しない筈がない。
何時しか、凪は、海を愛した。
けれど、凪は海を愛せば愛す程疑心暗鬼に陥った。
「だって、解らないんですもの。海様はきっと、未だに亡くした奥方様を愛してらっしゃる。父様はどうしてあたしをあの女(ひと)と同じ顔に作ってしまったの……… 」
凪の呟きは、風に乗って部屋の外へと流れてゆく。
開け放たれた襖の向こうには、新月に欠けた月。
「馬鹿な子だね ……… 。凪は……… 。」
溜め息混じりの声が聞こえて、驚いた凪は声のした方へ顔を向けた。
今では聞き慣れた、愛しい男の声。
それ以前に、此処にいる男は大好きな父意外に一人しか居ない。
一人しか来ない。
「海 ……… さま ……… ? 」
覗き込むように、柱の影から現れるのは、長身の男。
弾かれたように立つ凪と、彼女の前に跪く海。
良い具合に目線が重なって、海は、ふわりと凪を抱き寄せた。
「俺は、今の小さい凪が好きだよ。勿論、前の奥さんと比べたりしない。凪は凪だ」
「あたしは、がさつだし、気がきかないよ」
「そうじゃ無いでしょ。凪は、明るくて、元気よくって、ちゃんと自分の意見を持ってて、発言出来るってだけでしょ」
「それに身体ちっさいし、幼児体型だし、胸無いもん。海は、こんなに綺麗でカッコ良くて、背が高くて ……… 。釣り合わないもん 。あたしだって、身の程くらい知ってるもん。あの女みたいに」
「なぎっ!! 」
執拗に己を卑下する凪に、海は少しイラついて、思わず凪の唇を塞いだ。
凪に、自分を卑下して欲しく無かった。
自分と、昔の凪と比べて欲しく無かったのだ。