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方違えた教師
第4章 三者面談当日
「中山さんは、コツコツ頑張っていますよ。授業での態度も大変真面目で板書以外の口頭で伝えた部分などもきれいにまとめてくれています」

(え・・・)

「成績も、どの教科もバランスよく勉強していて、特に古典は今までテストでも一問も落としたことがないんですよ」

「古典なんかよくても・・・、大学に行けるのかしら」

(古典なんかって・・・確実に母は私が古典が好きなことを知らない。って、藤野先生古典の先生なのに!)

よりによって、古典の先生に「古典なんか」という母の隣で消え入りたい気分になる。
ちらっと、藤野先生をみると特に気にしている様子はなくいつものように穏やかな表情。

「受験でもほぼ必須教科ですし、苦手な生徒が多い中で古典が得意というのは有利だと思いますよ」

「そうですか・・・」

納得していない様子の母。

「このままの調子で、中山さんらしくコツコツ学習していけば確実に実力をつけていけると思うので頑張ってくださいね」

急に私のほうを向いて話しかけられ、驚く。
古典が好きなことも、コツコツ勉強していることも知られていて動揺しつつも担任だから当たり前だ思い、とりあえず返事をする。

「はい」

その返事に、藤野先生は私を見て普段より穏やかな優しい笑顔で受け止めてくれた気がした。
何か落ち着かない。何か変な居心地の悪さに再びうつむいてしまう。

「次に生活面ですが、宿題なども丁寧で、忘れ物などもなく提出期限も守ってくれて大変こちらとしても助かっています」

「こちらの学校では、そんなことも普通にできない生徒がいるんですか?」

(お母さん、余計なこと言わないで・・・)

兄が通っていた、有名進学校とは違い中堅公立高校に通う私。その時点できっと母からすれば汚点でしか無いのかも知れない。

「できない生徒というより、どうしても一回や二回くらいは忘れてしまったりする中で、中山さんは一度として忘れたことがないんですよ。生活面はご家庭での方針の影響が大きい部分なので、おそらくお母様のご家庭での指導の賜物なのでしょう」

「えぇ、他人様に迷惑をかけないよう常々言っておりますので」

母は、思わぬところで自分をほめられ悪い気がしなかったのか、今まで厳しいかった表情が少し緩む。

(確かに言われてるけどね)

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