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ランジェリーの勇気
第2章 破
セックスは、彼女にとってのとても大きなテーマだ。
女性誌を読んだり、インターネットのブログを見たりするにつけ、多くの女性たちが性の喜びを語り、そのめくるめくような体験を赤裸々に明かすのを目にするたび、居心地の悪い、とても落ち着かない気持ちになる。
自分の思いとずれた恋人は、ずれていればずれただけ、奇妙なセックスを行う。愛撫が不十分なまま、挿入に至ろうとしたり、逆にしつこいくらい何度も言葉で確認を求められ、気持ちがすっかり覚めてしまうこともある。20代も後半になり、そういったことが繰り返されるたびに、彼女の心は疲弊し、磨耗してくる。
夢など、見るものではない、と。
自分にピッタリのパートナーなどというものは、ティーンの少女達が思い描く幻想なのであり、むしろそのありえない理想とどこいらへんで折り合いをつけるのが、人生というものなのかもしれない、と彼女は考え始めていた。
セックス記事の載る女性誌の別ページには、ドメスティック・バイオレンスや中絶などのひどい記事が載っており、それを読むにつけ、いままでそういった本当に悲惨な目に遭わなかっただけでも自分は幸福だったといえるのではないか、と彼女は思う。そして、定期的に、自慰行為にひたる。