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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第5章 しのちゃんの受難(三)

「無事に帰してくださいね」
「かしこまりました。はい、智子さん、行きますよ」
「……ふぁい……ん」

 目を閉じた智子先生を立たせ、その肩を抱いて、水谷さんは実にスマートに去っていった。
 細い体なのに人と荷物を抱えても全く危なげないので、だいぶ鍛えているのだろう。

 水谷さんが帰ってから、私はようやく深いため息を吐き出す。

「あー、ビックリしたぁ」
「いやー、ビックリした」

 板長と同時に言葉が出てきて、二人で顔を見合わせたあとに笑う。

「大丈夫、ですよね?」
「大丈夫、だと思うぞ?」

 ビールをちびりと飲んで、軟骨の唐揚げをつまむ。ちょっと冷めてしまった。けど、コリコリしていて美味しい。

「一人で飲む羽目になるとは思わなかったなぁ」

 頼んだ料理を見つめて、食べきれなかったら持って帰ろうと決める。
 うん、明日の昼食にでもしよう。

 智子先生がちょーイケメンとうまく行きますように!
 そっちのほうが、大事なのだ。
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