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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第1章 しのちゃんの受難(一)
「しのちゃん、実習生に告白されたって本当!?」
「実習の先生、しのちゃんの教え子だったんでしょ!?」
二年四組だけで話が終わるわけがないと思っていたが、他のクラスに情報が回るのが予想以上に早かったな、と一時間目の五組の授業でため息をつく。
こちらも特別進学クラスなのに、そういう話には興味津々といった表情の生徒が多い。興味がない子たちは、古典の教科書でたくみに手元を隠しながら、英語や数学の予習をしているようだ。
「告白されたのは事実ですが、既にお断りをしています。それに、里見先生の担当になったことはありません。ただ、彼が受験生のときに国語を教えたことがあるだけです」
女子からは「ええーっ」というブーイングの嵐。本当に、「誰と誰が付き合っている」「誰と誰が別れた」という恋の話が好きだねぇ、君たちは。
男子は興味津々な子とそうでない子が半々くらい。前者は既にニヤニヤ笑いながら私を見ている。君たちは卑猥な妄想をするのをやめなさい。
「なんで断ったんですか?」
「先生と実習生ですから。社会人と学生では価値観も立場も全く違います」
「じゃあ、社会人になったら、断らないんですか?」
「恋人がいるいないなどのタイミングにもよりますが、相手の方をいいなと思えたら付き合いますね」