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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第10章 しのちゃんの受難(六)
「私、普通の女だよ? 普通の国語教師だよ」
「わかっているよ。恋に落ちるのに理由が必要だなんて言わないよね?」
「……確かに」
自分の気持ちが簡単に制御できるなら、誰も悩んだりはしない。
梓から、なんでそんな人を好きになったのか、と礼二のことを責められても答えようがなかった。
それと同じだとは言わないけれど、宗介も、ただ、私のことが好きなのだ。きっと。
「小夜の好きなところを教えてもらいたいなら、教えるよ」
「っへ?」
いつの間にか、見慣れたエントランスに着いていた。パネルに鍵を差し込んで、ロックを解錠する。
「知りたい? 一晩かけて教えてあげる」
いや、あれ以上濃厚な時間を過ごすのはしんどいです! 非常にしんどいです!
「小夜」
人目はなくても、エレベーターはカメラがあるので駄目! と、必死で宗介から逃げて、部屋へとたどり着く。
「小夜」
背後から聞こえる欲情の声を振り払いながら、部屋の鍵を開けて。
「捕まえた、小夜」
後ろから抱きすくめられながら、その暖かさを好ましいと思う自分に驚く。
「二回戦、頑張ろうか」
もう隠すことなく私に硬く滾った熱を押しつけながら、宗介は耳元で開戦の狼煙を上げる。
「宗介、もう少し、我慢――」
「しない」
即答の声にため息をつきながら、後ろを振り向く。性急に重ねられる唇に、彼の余裕のなさを感じながら、苦笑する。
今日は玄関で最初にキスしてばかりだわ。