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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第10章 しのちゃんの受難(六)

「ねぇ、小夜。今夜泊まってもいい?」
「あ、泊めるつもりでいたけど」
「っ、嬉しい!」

 こらこら、シャンプーしながら振り向かないで。泡がこっちに飛び散るよ!
 本来なら独身寮への学園関係者以外の立ち入りは禁じられているけれど、そのあたりの管理は緩い。
 それに、宗介は一応教育実習生だから関係者と言ってしまっても良いだろう。他の先生方に迷惑さえかけなければ良いのだ。

「でも、下着はないよ」
「持ってきているので大丈夫」

 荷物、少ないような気がしていたけど、ショルダーバッグの中に下着くらいなら入りそうだ。
 宗介が洗い終わったので、私が入れ替わりで洗い場に出る。宗介は裸の私をぎゅうと抱きしめて、キスをして、湯船に入ってニヤニヤしている。
 んもう。スキンシップ過剰だなぁ。

 独身寮で一番気に入っているのは、このお風呂だ。
 トイレとお風呂はセパレート。湯船と洗い場が分かれていて、どちらも狭すぎることはない。湯船は足が伸ばせるくらいのサイズなのだ。
 安くてお風呂の広いアパートやマンションは都内ではなかなか探せない。寮があって、本当に良かった。

「小夜は結構胸あるね。着痩せするタイプだね」
「智子先生には敵わないけどね」
「あぁ……あの人に勝てる人はグラビアアイドルでもなかなかいないよ」

 だよねぇ。Gカップと比較しちゃいけないよね。
 いや、私だって出るところは出ているし、引っ込むところは引っ込んでいるのだけれど。体に対するコンプレックスは、やはり一つや二つは抱えている。

「宗介は巨乳が好きなの?」
「小夜の体が好き」

 即答である。「もし私に聞かれたら」のシミュレーションでもしているかの如く、即答である。
「好きになった人が『タイプ』です」とはよく聞くけれど、なるほど、ねぇ。上手なかわし方なのかもしれない。
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