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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第1章 しのちゃんの受難(一)
「――協力者の募集。ちなみに、クマ先生は協力者の一人です」
「なんっ」
本当に意味がわからない。
佐久間先生、私を売ったの!? こんなに尽くしている副担を裏切ったの!?
「ありえない……」
「ありえますよ。受験のときから、クマ先生に相談に乗ってもらっていましたし、ゼミの教授を紹介してもらったのもクマ先生です。ちなみに、退職したあとのクマ先生の後釜に入れるよう、学園側にも手を尽くしてもらっています」
「……」
開いた口が塞がらない。
なんということだ。いつの間に、彼のそんな計画に佐久間先生が乗ってしまったのだろう。あの佐久間先生を篭絡するとは、里見くん、かなりの手練ではないか。
あぁ、私を二年四組の副担に指名したのも、きっと佐久間先生の策略なのだろう。ベテラン先生の退職を間近で見られて寂しいけど嬉しいな、なんて思っていた二ヵ月前の私を殴りたい。
クマめ! 謀ったな!!
「協力者も獲得できましたし、おおむね計画通りですよ。彼氏と別れてくれる日を、ずっと待っていました」
いつの間に移動したのか、里見くんの体が、顔が、目の前にある。
受験生だった頃はかわいい顔だなと思っていたけれど、今里見くんは生徒に言わせたら「カッコイイ」らしい。「イケメンなのになぜ付き合わないのか」と騒ぐ女子高生の言葉を疑うわけではないけれど、確かに、夕日に照らされて赤く染まる顔は、格好いい、のかもしれない。
「長かった……これで、あなたを堂々と口説ける。あなたが、俺を見てくれる」