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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第11章 【回想】里見くんの決断

「なんで里見くんは彼女作らないの?」

 誠南学園から誠南大学へ進学する生徒は多く、俺もそのうちの一人であった。
 しかし、学部や学科が違えばかつてのクラスメイトや同級生と顔を合わせる機会はほとんどなかったし、会ったとしても簡単に挨拶するくらいで終わっていた。

 彼女を除けば。

「椿、邪魔」
「うん、邪魔してる」

 大学二回生になり、高村礼二とはもう別れた彼女には利用価値はない。俺は椿を焚きつけたし、ホテル出入口での写真も撮ったが、その後の二人の関係には全く興味がない。
 そもそも、最初から興味はない。

「何で邪魔するわけ?」

 テキストを取り上げられて試験勉強ができなくなった俺は、椿奈保子を睨む。椿は頭上でテキストをヒラヒラさせながら、笑う。
 広い食堂には、俺と同じように試験勉強をしている学生は多い。そこに椿が現れて、勉強を邪魔されている。

「相変わらず、ガリ勉だね」
「目標があるから」
「へぇ。夢に向かって頑張る人は好きだな」

 大学生になって、髪の色を明るく染め、緩いパーマを当てた椿は、化粧をするようになったこともあり、高校時代と比べるとかなり華やかになった。
 胸元がざっくり開いたトップスに、ホットパンツ。服装もだいぶ派手になっている。

 経済学部に進学した椿とは、たまに顔を合わせる程度だったが、俺が試験勉強で教育学部棟に近い食堂を使っていることを知られてからは、毎日のように現れて、このように俺の邪魔をする。
 非常に迷惑している。ものすごく迷惑だ。
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