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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第11章 【回想】里見くんの決断
「バイトは順調? なんで大塚塾に行かなかったの?」
「……別に。家から近い塾にしただけだよ」
塾講師のバイトをしなくても、俺の貯金額は程よくあった。家から通っているから、出費も少ない。必要なのは携帯代と交際費くらいだ。
だから、両親からもバイトをするのは一度は反対された。けれど、「教師になる」という目標のため、説得をしてバイトをさせてもらうことになったのだ。
学業を疎かにしない、という条件付きで。
ゆえに、試験勉強ができずに単位を落とすのは、非常に困るのだ。
「高校のときはあれだけ相談に乗ってくれたのに、今は冷たいんだね」
「今は優先順位が違うから」
椿の恋愛トークに付き合う理由も義理もない。そもそも、彼女に関わるメリットがない。
高村礼二は相変わらず別の女子高生と付き合い続けているが、小夜先生と別れた気配はない。それは確認済みだ。
「椿、邪魔しないで」
「じゃあ、頼み事を一つ叶えてくれたら、ね」
勝ち誇ったような笑みを浮かべて、椿は俺を見下ろす。いや、見下(みくだ)しているのか。どちらにしろ、気分は悪い。
高村礼二にあてがうのは、椿ではないほうが良かったのかもしれない。厄介すぎる。