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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第14章 【回想】里見くんの協力者
誠南学園の学園長代理、玉置梓が就任したのが今年度。それは、珈琲館の夫婦から聞いていた。
だから、二人に娘さんとの面接のお膳立てを頼んだのだ。
この頃には既に、俺が小夜先生のことを好きだということは二人に伝えてあったので、恋愛話大好きな奥さんのほうが諸手を挙げて「私、やるわ!」と協力を申し出てくれたのだ。ありがたく、協力してもらった。
「自分は里見宗介、誠南学園出身、誠南大学教育学部数学科三年、十条ゼミに所属しています。来年度の教育実習を、誠南学園で行うように内諾をいただいています」
「そのようね」
「本題から入らせていただきますと、自分を再来年度、高等部の佐久間先生の後任として採用していただきたいのです」
学園長代理は一瞬眉根をピクリと動かして、少し口角を上げた。
「すごい自信ね。自分は採用に足る人物だと思っているってことだものね。両親からあなたの人となりは聞いているけれど……正直、性格だけで教師を採用することはできないわ。いくら、いい人、でもね。あなたを学園に採用したら、どんなメリットがあるの? それを教えて」
学園長代理の性格は、ご両親と佐久間先生から聞いている。
合理的な経営者。
だから、「教育理念に賛同して」だとか「学園の校風が好き」だとか、そういう志望動機では彼女の心は動かされない。
当然だ。彼女は同僚を採用しているのではない。経営者として、部下を採用するのだ。