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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第14章 【回想】里見くんの協力者
「こちらは今自分がバイトで講師をしている塾の、全体の大学合格率と自分が担当している生徒の合格率です。こちらはセンター試験の点数です。数学を利用する生徒は、国公立や難関私学への進学希望者が多いので、大学名も記載しておきました」
「……」
「学園の特進クラスの生徒の数にこちらのパーセンテージを適用した結果が、こちらの資料です」
学園長代理は俺が準備したプレゼン資料に無言で目を通す。
俺が何も言わなくても、数字を見ればその意図を読み取ってくれるはずだ。
彼女のように、経営に携わる人にとって、数字は何よりも大切な指標だ。
「こちらは先日の一斉模試の結果です。受けた生徒の絶対数が少ないので、資料としての価値は高くありませんが、偏差値欄を見ていただければ」
「なるほど、ね」
「去年の偏差値からは上がっている生徒しかいません。偏差値を上げ、合格率を上げるのは、得意です。学園から大学への内部進学率は高いですが、外部大学への進学率を上げるなら、学園としても偏差値と合格率は上げたいところじゃないですか?」
「……塾は個別指導? それとも、一斉指導?」
「一斉指導です。教員になるためには一斉指導は欠かせないと思い、そういう塾を探しました」
聞かれたことには理由をつけて答える。
今、この瞬間に、自分を売り込むだけ売り込まなければならない。自分が「学園に必要な人材」だと思わせなければならないのだ。
これは俺の、就職活動だ。