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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第15章 しのちゃんの受難(九)
朝、職員室の隣の会議室は、異様な雰囲気だった。
それもそのはず。今日、木曜日は、研究授業をする実習生が四人もいるのだ。宗介も稲垣くんも、今日。
皆、テキストを読み込んだり、指導案のチェックをしたりで忙しそう。
何だか、彼らの緊張が私たちにも伝わってくるようで、指導教員は皆そわそわしている。
佐久間先生も、いつもは飲まないお茶をガブガブと飲んでいる。
当事者ではない私は、実習生から配布された学習指導案のコピーを眺めながら、懐かしいなぁと微笑むのだ。
残念ながら、宗介の研究授業は見ることができない。いつもなら空いている時間なのだけれど、先週の出張で振替授業が入っているのだ。
本当に、残念。
だから、初めて、学園にいるときに、スマートフォンからメッセージを送る。
『がんばってね』
頑張れ、宗介。
でも、忘れないで。
そこがあなたの――スタートラインなんだよ。
◆◇◆◇◆
三時間目が終わる。
宗介は四組、私は一組で授業だったから、声は聞こえなかった。
……無事に終わっているといいんだけど。
四時間目は授業がないから、国語準備室に戻って今日の一二三組の小テストの結果をパソコンに入力して、来月の期末試験の問題作成に取りかかって……と、考えていると、いつの間にか目的地。
「在室」をひっくり返して、準備室に入る。