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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第15章 しのちゃんの受難(九)

 馬鹿だな。

 公開告白なんてしなくても、宗介のことを生徒たちが忘れるわけがないのに。三週間で、宗介はだいぶ慕われているのに。

 私が、宗介を拒否するわけがないのに。

「――また、同じように口説いてください」

 私、ちゃんと笑えているだろうか。
 ちゃんと演じられただろうか。

 宗介と視線が交じる。彼は、これ以上ない、満面の笑顔で私を見つめている。

「三回目で篠宮先生を口説き落とします」
「……待っています」

 歓声があがり、拍手が沸き起こり、講堂が揺れた、ように感じた。
 祝福なのか、励ましなのか、生徒たちのそれぞれの声はわからないけれど。
 とにかく、やたらと盛り上がってしまったことだけは確かだ。大騒ぎだ。

「ありがとうございました」と宗介が壇上から降りても、ざわめきは収まらず、司会の梓がようやく「静かに!」と叫んで事態は収束する。

 そして、私は、生徒会の子にマイクを返しながら、この空気のあとに挨拶をしなければならない残り二人の実習生に、あとで謝らなければならないなぁと思うのだった。

 本当に、ごめんなさい。
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