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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第15章 しのちゃんの受難(九)
「もう一度、言いますよ」
強すぎることはないライトは、私の視界から周りの人を消して、同じように壇上でライトを浴びる宗介だけを浮かび上がらせる。
宗介は、私を見つめて微笑んでいる。
こんな演出、聞いたことがない。
頭がクラクラしそう。いや、もうクラクラしている。
あぁ、本当に、もう……馬鹿なんだから。
「俺はあなたのことが好きです」
歓声があがる。
けれど、それも聞こえない。ただ、宗介の声だけが頭の中に響く。
「篠宮小夜先生、俺と結婚を前提にお付き合いをしてください。お願いします」
私はマイクがオンになっていることを確認する。
「お願いいたします」
宗介は、本当に、大馬鹿者だ。
悔しいけれど、その思惑に――乗ってあげようじゃないの。
「里見宗介先生」
騒がしかった講堂が一気に静かになる。
梓が生徒たちのざわめきを止めなかったことからも、この茶番が仕組まれているものであることは明白だ。
「……大学を卒業して、無事に教師になれたら、ようやく私と対等です」
宗介の口角が上がる。
選択肢は間違えていなかったようだ。
「あと十ヶ月後に里見先生がまだ同じ想いなら――」