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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第2章 【回想】里見くんの決意
また会いたいと思えば、絶対にまた会える。それが、運命、なら。
そう思って、生きてきた。
「国語でめちゃくちゃいい先生に出会ったんだよ」
根っからの理系で、現代文も古典も全く駄目だった稲垣が、学年末試験で急に国語の点数を上げてきたものだから、相当驚いたことを覚えている。
「大塚塾にそんなにいい先生いたんだな」
「おお、わかりやすいし、かわいいし!」
かわいい先生は正義だ。
羨ましいと思いながら、隠し撮りされた携帯写真を見て、周りが「かわいい」「いや、うちの先生のほうがかわいい」と騒いでいる中、俺だけが驚愕する。
「小夜、さん」
「そうそう。宗介、知ってんの? 篠宮小夜先生。しのちゃんって皆呼んでる」
知っているも何も、俺の好きな人だよ。こんなところに、いたなんて。
小夜さんはホワイトボードを背に、笑いながら何かを説明しているようだ。
そうか、そこにいたのか。
「しのちゃんもここの卒業生でさ、話が盛り上がっちゃって。歩くエロのことは知らなかったけど、クマ先生とか大石のことは知ってるってさ。三ヶ月後、六月に教育実習でウチに来るっていうから、ウチのクラスの担当になってくれないかなぁ」
三ヶ月後の六月。
教育実習。
小夜さんは、先生になりたいのか。
……先生。
俺は、高校一年の三月に進路を決めた。
俺も、先生になろう。