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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第17章 【回想】里見くんの始まりの日
少し話をするだけで、愛しさが込み上げてくる。
会いたかった。
話したかった。
ずっと、こうして――目の前で、あなたの視界に俺しか入らないようにしたかった。
「先生、覚えていますか?」
小夜先生がきょとんとして俺を見上げる。
あぁ、もう、かわいい。ほんと、かわいい。何なの、その表情。今すぐ抱きしめてしまいたい。
「はい?」
「俺が先生に告白したときの、先生の返事」
小夜先生は頬を染めて、ちょっとだけ口角を上げて笑う。
覚えていて、くれたみたいだ。
嬉しい。だめだ、めちゃくちゃ嬉しい。口元が緩む。馬鹿みたいだ。
「『大学を卒業して無事に社会人になったら、ようやく私と対等です。あと五年後にまだ私のことを覚えていたら、また口説きにきてください』と、おっしゃいましたよね、先生」
「……はい」
恥ずかしがって微笑む小夜先生。
もう、駄目。
俺の理性への破壊力が大きすぎる。
なに、その笑顔。かわいすぎるでしょ。天使か? 天使なのに、俺を悶え殺す気?
そんな、我慢のきかない俺の目の前で、髪をかき上げるから、その瞬間に――ふつりと限界の糸が切れた。
「……あと一年、我慢できそうにないので、今から口説き始めてもいいですか?」