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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第4章 【回想】里見くんの計画
クマ先生は、結局、俺の熱意を見込んでくれたのか、協力してくれることになった。
執念深い生徒だと思われただろうから、恐れられたのかもしれないけど、それはそれで都合が良いことだった。
クマ先生曰く、学園に採用されるには、やはり学園の大学へ行くのが手っ取り早いとのことで、誠南大学へ進学することになった。
そうすれば、大学にいるクマ先生の後輩の教授に紹介してもらえるという約束も取りつけた。
その教授のゼミは教員採用試験に強いゼミだと聞いた。ゆえに、ゼミに入ること自体難しいとも。
願ったり叶ったりの展開に、命令されたら、クマ先生の靴でも舐められそうな気がしていた。
新しい父は、誠南学園そして誠南大学法学部出身だった。
だから、学園に俺を編入させのだ。
自分の母校の教育の素晴らしさを息子にも与えたい、そんな親心だったのだと言っていた。
義理とはいえ、親子は親子。
教育にかける資金はたくさんあるので遠慮しないようにと言われた。ありがたいことだ。
そして、ゆくゆくは俺にも法学部を卒業してもらい、司法試験に合格したあとは自分の事務所を手伝ってほしいと言われた。
けれど、強制はしない、という言葉も添えて。
だから、俺にその気はなく、誠南大学卒業後は教師になりたいことを素直に伝えたら、少し渋ったあとに許してくれた。
親子そろって「誠南大学卒業」ならいいだろうと考えたのだろう。
反対されたら奨学金で通わなければならなかったので、助かった、と思った。
正直な話、やはりお金があってよかった。
いくら母が亡くなった父の保険金を貯金していたとはいえ、母子家庭では工面するのは難しい金額だった。
母の再婚は間違いではなかったと、心の底から二人を祝福した。
俺は現金なヤツなのだ。