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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第5章 しのちゃんの受難(三)
「おはよう、篠宮先生」
背後から聞こえてきたハイヒールの音に、気づかないフリをしていたわけではないけれど。
同じ独身寮に住んでいるのだし、始業時間も同じなのだから、朝に顔を合わせることもある。今日は雨だから、自転車で登校しなかったのだ。小雨でも私は徒歩で登校するようにしている。
振り向くと、Gカップが揺れていた。ほんと、朝からありがとうございます、木下先生。今日はブルーのブラウスのボタンが二つほど留まっていませんよ。カーキのブラ、透けて見えていますよ。スカートも短くていい感じです。
「おはようございます、木下先生……お疲れですか?」
「昨日の合コン、駄目だったのよ。うちに帰ってヤケ酒したら二日酔い。今日は授業が少なくてよかったわ」
え。木下先生のエロ度をもってしてもお持ち帰りされない合コンて、どれだけ周りのレベル高いんですか。
そんな合コン、出られる気がしない。きっと私じゃ引き立て役にもなれない。
私の心の声を知らずに、木下先生はため息を吐き出す。お酒臭くはないけれど、目の下がいつもよりくすんで見える。太陽光がないせいではないだろう。
「相手の方の職業は?」
「医者と弁護士と経産省」
「レベルたかっ!」
思わず本音が漏れる。傘を持っていない左手で口を塞ぐが、二日酔いの木下先生は気にしていないようだ。
木下先生は淡いパステルブルーのドットの傘をクルリと回す。
今気づいたのだけれど、意外とネイルは控えめだ。短い爪に白と薄いピンクのフレンチネイル。実はかわいい系が好きなのだろうか。服装はこんなに激しめなのに。何だかアンバランスだ。
「こっちはキャビンアテンダントと地方局の女子アナと教師よ……惨敗だったわ。女子アナがぜんぶ持ってっちゃった」
「ああ……目に浮かぶようです」