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Oshizuki Building Side Story
第6章 Flapping to the future!
「あのね、朱羽。1ついい?」
「なに?」
「喜多見響からポスターって貰えたの?」
すると既に臨戦態勢だった朱羽は少し不満そうな顔をしたが、あたしから離れて部屋を出ると、大きな封筒を手に戻ってくる。
体を起こして、手渡された封筒を開けると、そこには――。
つがいで大空に飛び立つ白い鳥のような、空に浮かぶ雲のようにも思えてくるデザインで。
それは不安など掻き消すほどに雄大で、未来の吉兆を思わせる壮大なポスターだった。
あたしが知る限り、喜多見響はこのデザインのポスターを作ったことがない。
つまり、忙しいだろうにわざわざあたしの、いや朱羽と2人のために作ってくれたのだ。
『不安を怖れず、2人で未来に生きろ』と――そう、言われている気がした。
そして右下には、喜多見響のサインと、こう記してあった。
『空間デザインも手がけている。披露宴が決まったら、連絡してこい』
つまり――。
「披露宴、喜多見響がデザインしてくれるってこと!?」
驚くあたしに、朱羽はポスターを取り上げて放ってしまった。
「……仕方がないだろう? すぐに結婚してくれようとしない俺の可愛いお嫁さんを、その気にさせるためには」
嫉妬深いくせに、健気で一途な愛おしいひと。
「だから、喜多見響に忘れられないためにも、明日から結婚式場を回ろうね、陽菜」
ちょっと強引で気が早いところもあるけれど、これ以上ないってほど、あなたが好き。
「……返事が聞こえないんだけど!」
「ふふふ、勿論、うん!」
……だから今夜は、ほどほどに愛してね?
【完】