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Oshizuki Building Side Story
第7章 Turning point of love!

皆に祝って貰えて嬉しい(ひとりを除いて)。
そしてふと、結城と目が合う。
彼は真っ赤な目で泣いている。
「なんで結城まで、泣くのよ」
「うるせーって。友達として嬉しい報告だからに決まってるだろ。なんだよ、お前。そういうこと、直接俺達に言えよ。その前に香月――朱羽に言えよ。これ以上ない、最高なことを」
「結城……」
「めっちゃ嬉しい……。俺の親友ふたりの子供だぜ? 震えがくるくらい、嬉しすぎる。なにこの、サプライズプレゼント」
結城は嬉しそうに言うと、そのまま衣里を見た。
「鹿沼と朱羽の子供、俺抱きたいわ。な、衣里」
真下の呼び方から、名前呼びになった。
「自分のこと後回しにして、応援してくれていた鹿沼と朱羽に、ガツンとやられたわ。俺、色々衣里が喜びそうなシチュを考えていたんだけど、そんなのどうでもいい。お前もそうだろう?」
衣里は小さく頷いた。
すると結城は深呼吸をして、微かに震える声で言った。
「――衣里。俺、お前が好きだ。俺と付き合って欲しい」
空気が、しんと静まり返る。
「お前とは友達で始まった。今は俺にとってお前は好きな女以外のなにものでもなくて、鹿沼と朱羽とは違うんだ。お前と他の男の子供なら、俺喜べねぇ。お前を他の男にやりたくねぇ。それくらい、俺はお前が――」
途端、衣里が走った。
長い髪を靡かせ、風に涙を散らせて。
そして、結城の首に両手を巻き付かせると、つま先立ちをして――結城の唇に自分の唇を押し当てたのだった。
過度なシャイである衣里の、精一杯の勇気。
「――陽菜以上に幸せにしてくれないと、許さない」
やはりまだ口調は素直ではないけれど、その笑顔は本当に可愛く綺麗な女の子のものだった。
「それは、期待しておいて?」
にやりと笑う結城は衣里を抱きしめ、深く口づけた。
衣里が結城の背中を叩いても、結城は離さない。
やがて衣里は、震える手を結城の背に置いて、口づけに甘んじた。

