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Oshizuki Building Side Story
第7章 Turning point of love!

「だったら、衣里は? 結城と衣里は……」
「寝ぼけているね、陽菜。今日、皆の前で結城さんが告白して、真下さんが彼に飛びついてキスをして、OKを出したの見たじゃないか。大泣きで」
「水着で?」
「水着? 正月参りに、結城さんと真下さん、三上さん、木島くん、渉さんと沙紀さん、そして向島専務と皆で行っただろう? その時だ」
……ああ、夢なのか現実なのかよくわからない。
まだ頭がぼんやりとする。
現実は……夏ではなく正月で。
――2020年、あけましておめでとう!
――今年も、シークレットムーンを大きくするぞ!
……そうだ、今日は1月1日の夜じゃないか。
時計を見ると、1月2日になっていたけれど。
少しずつ思い出してくる。
――衣里。俺、お前が好きだ。俺と付き合って欲しい。
結城があたしの妊娠に感動した……という夢のシチュではないけれど、夢と同じような感じでふたりは結ばれた。
――陽菜以上に幸せにしてくれないと、許さない。
嬉しい嬉しいとあたしは大泣きして、衣里と結城も嬉しい嬉しいと泣いてしまって、収拾が付かずに朱羽に連れ帰られたんだ。
――結城さんと真下さんをふたりきりにさせよう。
家に戻っても泣いていて、朱羽に抱かれている途中、疲れ果てて――寝てしまったようだ。これが現実の出来事。
嬉しいよ。
あたしの親友達が結ばれたのは。
だけど――なんだろう、このやりきれなさ。
あまりに夢が、センセーショナルだったものだから。
子供も沖縄も。
よかったのは、買っていないから水着代が浮いたことくらいで。
だったらあの有名パフェは?
いや、確かあれは食べたはず。
で、秋の記憶も年末の記憶も正月の記憶もある。
子供と沖縄の記憶だけが、余計なだけで。
なんという、小憎たらしく繋ぎ合わせたリアルな夢。
「ねぇ、陽菜。俺の子供がお腹にいる夢を見たの?」
朱羽が静かなる微笑みを湛えて、あたしの剥き出しになったままの腹をさする。
「あまりお腹触らないで。太ったから恥ずかしい……」
「太った? 年末の仕事が忙しくて痩せたよね?」
ああ、もう。
どこからどこが夢?

