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Oshizuki Building Side Story
第2章 Shooting the moon

「返事」
結城の指が私の頬を撫でる。
それだけで息を乱しそうなほどに、緊張して。
「私を好きじゃないくせにっ、好きじゃないのに抱いたくせにっ」
しかし結城は動じない。
「本当にそう思う?」
結城が至近距離で、妖しく笑う。
「……もっと思い出せよ、昨日のこと」
「……っ」
昨日、あれ以上のなにがあったの!?
「思い出したら、言ってやる」
結城の顔が傾き、近づいてくる。
「わ、私は雅さんが好きっ、結城だって陽菜のこと」
唇に触れる直前で、結城が止まった。
だが結城の目は挑発的に輝くだけ。
「お前の中の親父は、俺が消してやる。だからお前も……俺の中の鹿沼を消せ」
「……っ、そ、そんな……っ」
結城の強さに、全身が甘く痺れる。
「心配するな。じきにそうなるから」
雅さんではない男に、ドキドキが止まらない。
それでも、憎まれ口を叩いてしまうのは、許して。
「な、なにを根拠に」
「予感」
唇が重なる。
結城が固まる私に笑いながら、私の手を取り彼の首に回させた。
何度も重なる唇。
ここまでたくさんキスをされれれば、抵抗する気力もなくなる。
キスをする度に、私の中に結城が入ってくる。
……雅さんを、残したまま。
無性に結城にくっつきたい。
無性に結城にぎゅっとされたい。
それを見透かしたように、結城はあたしの顔を自分の胸につけて、ぎゅっと強く抱きしめてきた。
その心地よさに甘美なため息をついた。
ああ、なにかが……始まった予感がする。
私の身体は、結城を覚えていて恋しがっている。
いつかは、心も恋しがるのだろうか。
好きだと、結城に伝えられる日がくるのだろうか。
「……それと、あのさ。挿れてねぇから」
「え?」
「……指だけ。結構激しかったから、身体大丈夫だった?」
「……指」
指だけであんなにじんじんするものなの?
最後までしたら、私の身体どうなるんだろう。
「ああ。俺がやばかったから、とりあえずお前を必死でダウンさせた。まあそれはそれでやばいっちゅーか」
結城はぽりぽりと頭を指で掻いた。

