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Oshizuki Building Side Story
第3章 praying for Moon
 
 

 新年初出勤を2日後に控えた、1月3日――。


 昨年は激動だったように思う。

 あまりに次から次へと色々と起きたから、シークレットムーンに誰か厄年の人間がいるのだろうかとふと考えたあたしは、朱羽の家のソファで寝転びながら、スマホで厄年チェック!

 そうしたらふたり該当がいたんだよね……。

「お待たせ」

 朱羽が、淹れたばかりの珈琲を注いだマグカップをテーブルに置き、あたしの頭をよいしょと彼の膝の上においた。

 朱羽はいつも食後においしい珈琲を淹れてくれる。

 同じ豆であたしが淹れるとなんで味が変わるのかよくわからない。

――愛情の違いだよ。

 愛情たっぷりに淹れたはずなのに……。 

 マグカップは把手と一体型になっていて、丸みを帯びたフォルム。

 あたしは白で黒猫が、朱羽は黒で白猫が描かれている。

 インテリアショップで、朱羽がその猫を見たまま動かなかったから、お揃いで購入決定。本当に朱羽は、わかりやすいくらいに、白いふさふさ猫が好きらしい。

 きっとこのマンションも、ふさふさ猫グッズが増えて行くだろう(きっとあたしが増やしそう)。

 ……朱羽と話し合った。
 今後マンションをどうするのか。

 以前、囚人だと言った朱羽と、朱羽との未来が見えないと言ったあたしは、同じマンションの中で居心地のよさを感じているのは、戦いが終わって穏やかな気分になっているためなのかもしれない。

 朱羽と当主の迎合の形として、当分はこのマンションに住むことにしたようだが、やはり、タダでは施しを貰っているようで嫌だと、なにかしらの補填をと当主に言う朱羽に、当主は……名取川文乃の飼っていたヴァイスに対抗するかのような、見事なふさふさ猫を飼い、仕事のない日に本家で世話を申しつけた。
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