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第4章 Brother complex Moon　①

　




　Hina　side


　朱羽から兄弟が居ることは聞いたけれど、今のところ渉さんしか見ていない。

　昔、心臓発作の朱羽を見捨てたらしいことから、朱羽は思いきり渉さん以外の兄を嫌っているようだけれど、実際そんな極悪人なのか甚だ疑問だった。

　だって、朱羽も渉さんも極悪人なんかじゃないし、渉さんは今でも連絡を取り合っているらしいことは聞いていたから。

　だから、会長の見舞いに来た渉さんに聞いてみた。
　朱羽以外の弟について。

　丁度朱羽は沙紀さんとお弁当を買いに行った時だった。

「なんだ、カバ。朱羽にもう飽きたのか？」

「なにを言っているんですか！　違いますよ！　あたしはただ、朱羽が嫌うほど酷いお兄さんなのかが気になって……。渉さんの目から見て、朱羽以外の弟さん達は極悪人なんですか？」

　すると渉さんは腕組をして、実に複雑そうな顔をして言う。

「恐らく……、あいつらから見れば、俺の方が極悪人だと思ってると思うが」

「なにかやらかしたんですか？」

「ひでぇ言い方だな。……だけどまあ、そうなんだろうな。どんなに心配しても、電話にも出ねぇし。偶然装って会いに行くしかなぁ」

　彼は、哀しそうな目を遠くに向けた。

　……財閥絡みのなにかがある気がした。

　朱羽だって渉さんだって、忍月に酷い目にあってきたのだから、それ以外のお兄さんも違うとは言い切れないだろう。

　なんといっても後継者争いが絡んでいるのなら、それ相応の忍月からのちょっかいはあったように思うんだ。

　だけど、恐らくそれを知る渉さんは言いたがらず、なにか哀しそうな顔をしているのなら、あたしが興味本位で立ち入るのはいけない気がした。