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Oshizuki Building Side Story
第4章 Brother complex Moon ①
 


「須王さんのお相手の女の子は……」

「須王と同い年らしい。お前よりふたつ年下」

 ……千絵ちゃんや木島くんと同じ歳か。須王さんも。

「おとなしそうに見えたけれど、でも須王をあしらうサマはお前にも似て中々の強者だ。お前がカバでカワウソなら、柚はモグラだな。大きな手で一生懸命、須王とは逆の方に穴掘っているような。見えてねぇのか見たくねぇのかわからねぇけど」

 モグラ!!
 可愛いじゃない。

 須王さんのお相手、モグモグちゃんかあ!

 ほっこりと可愛い子なんだろうな。
 なんていっても、超有名な音楽家が手にしたいと思う子ならば。

「須王は……不憫な奴なんだよ。あいつなりに力を蓄えようとしているが、まだ届かねぇ。俺に頼ればいいのに、それすらもしようとしねぇで崖っぷち歩いている。……俺、まるで信用なく嫌われているからな」

 寂しそうな兄の顔。

「忍月相手に戦っている、ということですか?」

「忍月もあいつの敵だろうが、あいつにはもっと他の敵がいる。忍月のように影響力がある奴だ。板挟みのような格好だ」

「……そう、なんですか」

「ああ。孤独なあいつを、須王が惚れまくっている柚が、手を引いて助けてくれればいいが、お前とは違う立場にいるようだ」

「あたしと違うって?」

「仲間に恵まれてねぇらしい。だから仲間と団結して須王を支えることは難しい。それに須王は……」

 渉さんは言葉を濁して、その先を言わなかった。

 須王さんはなんなのだろう。

 須王さんに関して、なにを渉さんは知っているのだろう。
 単純に忍月問題だけではないような気が、渉さんから感じられた。

 渉さんが実に難しそうな顔をした時、朱羽と沙紀さんが帰ってきた。

「ただいま、陽菜ちゃん。はい、牛カルビ弁当!」

 焼き肉好きな沙紀さんが選ぶ弁当はいつも肉ばかり。
 朱羽は苦笑している。

「あ、ハヤセの曲じゃない!!」

 沙紀さんが目敏くあたしのスマホの中の、サントラを見つけて声を出した。

「沙紀も知ってたのか、須王の曲」

「勿論! だって有名でしょうこのひと。いろんな賞を取ってるし、雑誌にもよく載っているし。凄いイケメンだよね」

「あたし、顔はわからなかった。へぇ、そうなんだ」

 朱羽と渉さんの兄弟なら納得出来るが、あたしの周り、イケメン率半端ない。 
 
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