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Oshizuki Building Side Story
第5章 Coloring in a moon
Hina side
灼熱の太陽が照りつける7月。
今年もうだるような猛暑が訪れていた。
そんなある日のこと――。
「ただいま~。外、マジで灼熱地獄だった~」
「陽菜ー、すぅっとする化粧水貸して!」
結城と衣里、シークレットムーン最強の営業コンビが、ぐったりとして会社に戻ってきた。
結城は社長で、そして衣里は営業主任の肩書きを持ったけど、このふたりは今ですら、営業に関してはライバル意識を剥き出しにしていて、一緒に動くということはなかった。
だけど、衣里が昨日の居酒屋で、女だと馬鹿にしたらしい担当者の話を愚痴ったところ、それを一番に怒ったのが結城で、嫌がる衣里に構わずついていったのだ。
「うちの車が出払っているこんな暑い日くらい、タクシーで帰って来ればよかったのに……。はい、アイスティー」
あたしは、氷をたくさんいれた来客用のコップに、夏限定で自販機に現れた大人気の無糖のグレープフルーツティーを注いで、2人に渡した。
すると最初こそ2人はクールダウンして穏やかだったものの、会話を重ねるとまたヒートアップしてしまった。
「だから! あんたが経費をけちって、遠回りになる電車で行くとか言い出すからこうなったんでしょう!?」
「俺のせいか!? 遠回りになるなって俺が言った時、別にあんたとだったら遠回りでもいいって言ったのは、どこの誰……」
「言ってない、言ってない! 陽菜、私言ってないからね!?」
……この2人は相変わらずだ。
だけどまあ、あたしの知らないところで、ツンデレな衣里が結城には素直にデレている時があるのなら、まあよしとしようか。