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Oshizuki Building Side Story
第6章 Flapping to the future!
朱羽の顔がみるみるうちに嫌悪感に満ちる。
動揺するならまだしも、この反応ってなに?
「ありえない。陽菜、ちゃんと俺のLINE見たのかよ?」
再度見せられたLINEの画面。
そこには――。
『昨夜はかたじけないでござる。あの接吻は、貴殿の惚気にあてられた師匠の暴走なりて、忘れてくださるとありがたいでござる。なにせ某(それがし)、師匠のああいうお戯れに慣れておらず、破廉恥を貴殿に見せつけたこと、穴があったら入りたい心地でござる。某、貴殿に伝達する術をしらぬ故、師匠の伝達器具より失礼する』
やばい、あたしの頭が働いていない。
「ええと……、喜多見さんの彼女さんが、サムライガールってこと?」
カリスマデザイナーのお好みは、また一風変わった女性で。
……それしか理解出来ない。
「普通の女性だよ。恋人だけれど、彼のことを〝師匠〟って呼んでいる。その彼女が、飲みの時に面白いスマホアプリを見つけたと、喜多見さんにその場でダウンロードさせてね。それは書く文章がサムライのような言葉に自動変換されてしまうものらしくて、それでLINEもそんな言葉になった」
「そ、そう……」
確かに、現代でそんな言葉を好んで使う女性がいると言われるよりも、強制自動変換の方が、納得出来る気がする。
「それと接吻だけど、俺がしたんじゃなくて、喜多見さんが溺愛中の桐嶋さんにディープを見せつけて、禁欲中の俺を煽ってきたんだよ。それに対して桐嶋さんは、恥ずかしいところを見せてごめんなさいと、彼女は俺のLINE知らないから、喜多見さんのLINE経由で謝罪してきたのがあれだ」
あれ。
即ち、サムライ語で。
「彼女も酔っていたからアプリを切るのを忘れて送って、朝、喜多見さんに笑われて……怒られたようだ。多分、彼が寝ている時に勝手に俺に送ったからじゃないかな。あのひと、心狭そうだし。俺が言うのもなんだけど」
最後はぶちぶちと、よく聞き取れない。
「でもさ、喜多見響とLINEしていて、なんで〝ひまりん♡〟だったのよ! 今キタミなのは、登録名を変えて証拠隠滅じゃ?」
あたしはむっとして言ってみる。