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痴漢脳小説2 ~ガールズバンドに男子の僕が入っちゃいました~
第1章 『パンツァーカイル』
 三月最後の土曜日。地内の小さなライブハウス。『パンツァーカイル』のメンバーがステージの上でパフォーマンスを披露していた。

 ヴォーカルのシーカさんの強気な歌声でバンドの演奏も客席も盛り上がる。
 伸びのある歌声は狭いライブハウスの壁に反射してもっと広い世界に飛び出したがっているように聞こえる。
 最後尾イズミさんはバンドの音を支えるように淡々とドラムを叩き、カエさんはベースの重低音にセクシーに絡みつく。

 そして…あれは誰だ?

 小柄なおかっぱ頭の少女が激しくギターを掻き鳴らしている。

 …ハルナさん?ステージに上がると人格変わるの? それともギターを持つと変わるのか?

 ともかく。

『パンツァーカイル』のメンバーは僕の目にはとても魅力的に映った。

 彼女いない歴が年齢と同じ僕はモテないことには自信があるけど、だからこそ女のを見る目はシビアだ。
 危険を冒して痴漢をするなら可愛い子がいいし、痴漢というのは瞬間瞬間での勝負だ。対象を一瞬で見極め瞬間の判断で危険を回避しなければならない時だってあるんだ。

 だから僕の女の子を見る目は結構厳しいし、多少の自信もある。童貞が何を偉そうにと思うかもしれないけど、逆に女の子に縁がないからこそいくらでも辛口な目で見られるんだ。だって期待しても何も起きないんだもん。
 モテ男君は「ちょっとブスでもやらせてくれそうな子」にも手を伸ばすけど、僕なんかは相手がちょっとブスだろうがものすごくブスだろうが相手にもされない。だからこそ冷静な目で女の子を見られる。

 うん、このメンバーなら一年もあればCD千枚なんて楽勝だろうな。

 僕はその時はそう考えていた。

 一年はだいたい五十週。メンバーはバンドだけでは食べていけないからそれぞれに仕事があるから活動は土日が中心になるとしてもその土日と祝日だけ活動したとしても一年で百日近く活動が出来る。百日で千枚だから一日十枚売ればいい計算だ。メンバーが四人だから一人頭二枚と半分。

 どう見ても楽勝じゃないか。千枚なんてあっという間だよ。

 僕のそんな考えはとことん甘かった。
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