この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
蝶が舞う時
第20章 究極の依頼
俺は続ける。

「ただ治療をしても5年生存率を上げるための延命に過ぎないし、他の臓器に転移すればもっと早く逝く…」

「奥さんには言ったの?」

「まだだ。出産後で不安定だからタイミングを図っている。」

「俺は菜摘に話すことが怖い。」

彼女は頭を抱える。

「俺が生存している間は菜摘をフォローしながら子育てをするつもりだ。」

「問題は俺が逝ってしまったら、菜摘は精神的な支柱を失って恐らく止まってしまう。桂菜と奈菜の育児も出来ないだろう。」

「ヘルパーを雇って育児を続けることは可能だが、菜摘のフォローは無理だ。」

彼女は当惑しながらも俺の瞳を見続ける。

「正直、俺にはもう手がない…」


彼女は口を開いた。

「何と言えばいいのか… あなたも不憫だし、奥さんや子供達も可哀想…」

「俺は今日お前に究極のお願いに来た。」

「俺が逝った後、菜摘の精神的な支柱になり、桂菜と奈菜の育児をフォローしてくれないか?」

「ええ? 私が…」

「ああ…離婚したとはいえ、お前とは約30年一緒に生きてきた。お前の事は俺が一番よく知っている。お前なら安心出来る。」

「あ、あなた、自分が何を言っているかわかってるの? 」

「元妻が今の妻を支えて、私からすれば他人の子供を育てるなんて…ありえないわ。」

「お前の言うのも最もだ。普通は有り得ない。」

「でも俺には頼める人がいない。どうか俺の意志を継いで欲しい…」

「この通りだ。」

俺は立ち上がり両手をテーブルについて頭を下げた。

「お願いだ…」

目頭から涙が溢れてテーブルに滴り落ちる。

彼女は慌てて立ち上がると俺の肩を抱き、ハンカチを取り出して俺に渡す。

「と、とにかく座って…」

俺が座ってテーブルを見つめていると

「とりあえず、考えさせて。返事は早めにするから…」

「それと一日でも早く治療を始めて。菜摘さんと子供達の為に一日でも長く生きられる様に…」

俺は黙って頷いた…



/181ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ