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蝶が舞う時
第20章 究極の依頼
俺は続ける。
「ただ治療をしても5年生存率を上げるための延命に過ぎないし、他の臓器に転移すればもっと早く逝く…」
「奥さんには言ったの?」
「まだだ。出産後で不安定だからタイミングを図っている。」
「俺は菜摘に話すことが怖い。」
彼女は頭を抱える。
「俺が生存している間は菜摘をフォローしながら子育てをするつもりだ。」
「問題は俺が逝ってしまったら、菜摘は精神的な支柱を失って恐らく止まってしまう。桂菜と奈菜の育児も出来ないだろう。」
「ヘルパーを雇って育児を続けることは可能だが、菜摘のフォローは無理だ。」
彼女は当惑しながらも俺の瞳を見続ける。
「正直、俺にはもう手がない…」
彼女は口を開いた。
「何と言えばいいのか… あなたも不憫だし、奥さんや子供達も可哀想…」
「俺は今日お前に究極のお願いに来た。」
「俺が逝った後、菜摘の精神的な支柱になり、桂菜と奈菜の育児をフォローしてくれないか?」
「ええ? 私が…」
「ああ…離婚したとはいえ、お前とは約30年一緒に生きてきた。お前の事は俺が一番よく知っている。お前なら安心出来る。」
「あ、あなた、自分が何を言っているかわかってるの? 」
「元妻が今の妻を支えて、私からすれば他人の子供を育てるなんて…ありえないわ。」
「お前の言うのも最もだ。普通は有り得ない。」
「でも俺には頼める人がいない。どうか俺の意志を継いで欲しい…」
「この通りだ。」
俺は立ち上がり両手をテーブルについて頭を下げた。
「お願いだ…」
目頭から涙が溢れてテーブルに滴り落ちる。
彼女は慌てて立ち上がると俺の肩を抱き、ハンカチを取り出して俺に渡す。
「と、とにかく座って…」
俺が座ってテーブルを見つめていると
「とりあえず、考えさせて。返事は早めにするから…」
「それと一日でも早く治療を始めて。菜摘さんと子供達の為に一日でも長く生きられる様に…」
俺は黙って頷いた…
「ただ治療をしても5年生存率を上げるための延命に過ぎないし、他の臓器に転移すればもっと早く逝く…」
「奥さんには言ったの?」
「まだだ。出産後で不安定だからタイミングを図っている。」
「俺は菜摘に話すことが怖い。」
彼女は頭を抱える。
「俺が生存している間は菜摘をフォローしながら子育てをするつもりだ。」
「問題は俺が逝ってしまったら、菜摘は精神的な支柱を失って恐らく止まってしまう。桂菜と奈菜の育児も出来ないだろう。」
「ヘルパーを雇って育児を続けることは可能だが、菜摘のフォローは無理だ。」
彼女は当惑しながらも俺の瞳を見続ける。
「正直、俺にはもう手がない…」
彼女は口を開いた。
「何と言えばいいのか… あなたも不憫だし、奥さんや子供達も可哀想…」
「俺は今日お前に究極のお願いに来た。」
「俺が逝った後、菜摘の精神的な支柱になり、桂菜と奈菜の育児をフォローしてくれないか?」
「ええ? 私が…」
「ああ…離婚したとはいえ、お前とは約30年一緒に生きてきた。お前の事は俺が一番よく知っている。お前なら安心出来る。」
「あ、あなた、自分が何を言っているかわかってるの? 」
「元妻が今の妻を支えて、私からすれば他人の子供を育てるなんて…ありえないわ。」
「お前の言うのも最もだ。普通は有り得ない。」
「でも俺には頼める人がいない。どうか俺の意志を継いで欲しい…」
「この通りだ。」
俺は立ち上がり両手をテーブルについて頭を下げた。
「お願いだ…」
目頭から涙が溢れてテーブルに滴り落ちる。
彼女は慌てて立ち上がると俺の肩を抱き、ハンカチを取り出して俺に渡す。
「と、とにかく座って…」
俺が座ってテーブルを見つめていると
「とりあえず、考えさせて。返事は早めにするから…」
「それと一日でも早く治療を始めて。菜摘さんと子供達の為に一日でも長く生きられる様に…」
俺は黙って頷いた…