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蝶が舞う時
第22章 菜摘へ
大学病院から車で帰る途中で菜摘が口を開く

「おじさん、スーパーで食材を買わないと…」

「そうだな…」

菜摘は窓から外の風景を見つめながら

「おじさんは…死なないよね…」

「ああ…おじさんは不死身だ、大丈夫。」

菜摘は風景を見つめながら頷く。


菜摘の出産もあってマンションでの生活が久しぶりとなるため、スーパーでは食材を含めかなりの買い物をした。

桂菜と奈菜が退院したらミルクと紙おむつも必要になるが、それは次回にした。

マンションに帰り着き、買い物袋を開いて収納していく。

菜摘は冷蔵庫に食材を収めながら、

「おじさん…今晩はうなぎの蒲焼きよ。」

「おお…いいね…」

「うなぎは栄養価が高いから、おじさんの体にもいいわ。」

「菜摘…うなぎは精力にも効くって知ってるか?」

「ええ…知らない。でもおじさんいつも精力があるから…」

「はい…すみません…」

菜摘は少し微笑んだ。

俺は菜摘を抱き寄せて唇を重ねた。

「菜摘…おじさんはずっと菜摘の側にいるから安心していい…」

菜摘は俺の目を見つめながら頷く。


俺は菜摘が料理をする間、部屋の掃除を始めた。

菜摘が家にいる時は、結構頻繁に掃除をしていたので気にはならなかったが、流石に一週間以上掃除を怠ると埃が目につく。

俺が一通り部屋の掃除を済ませると

「おじさん、夕食が出来たよ。」

菜摘がキッチンから呼び掛けてきた。

俺はキッチンに向かいテーブルに着く。

テーブルの上には、ご飯と鰻の蒲焼き、それにお吸い物とお漬物が並べられていた。

「おじさん、他に食べたい物無かった?」

俺は蒲焼きを食べながら

「どうしても食べたい物がある…」

菜摘は箸を口に運びながら、

「何?」

俺は菜摘を見つめて

「菜摘が…食べたい…」

菜摘は笑いながら、

「嬉しいな! でもおじさん、出産後はしばらくダメだって。」

「やはりダメか…」

俺が寂しそうにしているのが菜摘にも良く判る。

「おじさん、繋がれないけど菜摘が気持ち良くしてあげるから…」

菜摘はニコニコしながら、蒲焼きを箸で割いていた。


俺は誰にも言えない死への恐怖から逃れたい。

菜摘と繋がって、菜摘の身体の中に逃げ込みたかった…

菜摘に包まれたい…
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