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《愛撫の先に…②》
第6章 この身を持って…
革靴で走る後ろ姿、なびく毛先、夕陽に照らされて結城の動きに合わせスーツにシワが見える。

奈々美は彼がそんなに走れるんだと魅入ってしまうほどだ、何故ならば彼の仕事はホテルでのフロント業務で座っているか、立って出迎えやお見送り、または館内の見周り等などで大股で疾走する事などないに等しいからだ。
お客様の為に館内を行き来する小走り的な事はあれど館内を大股で走る事はない。

だが車に戻る結城を見捨てて行ってしまうのかと彼女は哀しいという感情が胸から喉元へ押し寄せてくる感覚、うぅ…と声にならないのは口を封じられているからだ。

行ってしまうの?…
ううん、無理もない…
だけどあたしは車でさえ視界から遠ざかるまで見ていると思うの…

『あはは、おもしれぇっ、あいつはあんたを見捨てたんだ、そりゃアソコとアソコが繋がってりゃ誰だってそう思うさ』
たまごホリック男が愉快だとでも言うように肩を揺らせおかしそうに笑う。

アソコとアソコ…?
結城さんそれを見たの?だから…
何故…
哀しい哀しい…やるせない…
でもあなたには翔子さんがいる…
翔子さんがいる…

翔子という名前に再びドンッという鉛のようなドロドロとした感情が押し寄せる。

哀しいけどあたしには翔子さんみたいな魅力等何もない…
結城さんは翔子さんが好きなのよ…

何日も悩んだ事、苦しんだ事、だが先ほどまでのレイプにより翔子の事を考える余裕等奈々美にはなかった。
たまごホリック男はランチで2回店員とお客という形で知ってはいる・通りすがりのスエット男とは初対面、翔子を一瞬でも忘れられた事でレイプされてる方がマシだとでも?
それは抵抗する彼女の姿勢でわかっている事。
レイプは嫌!翔子という存在も嫌なのだ!

そんな事をまたぐるぐる考えている彼女。

『奈々美さ素直にあいつを諦めな、もしかしたら今ので受精してるかもよ、思いっきりいったし、イヒヒヒヒッ』
たまごホリック男は繋がった箇所を触る。

そんなの、そんなの、生まれてくる子には罪はないけどこの人とは未来など過ごしたくない…

〝レイプされた人は…もしかしたら妊娠という事もありうるの、あなたわかっていますか!?〟
奈々美はそう反論したいが布地で口封じの為に相手には何を言っているのか伝わらない。

『大事にするよ、奈々美〜』
たまごホリック男は妻子の親気取りを妄想し酔いしれている。
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