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第10章 結城と奈々美

最初はレッスンという名目から泊まり宿泊費は陽子から負担され、奈々美があの当時住んでいたマンションは後に解約しこのスイートタイムに転がり込んで住んでいたが白い家に移りたまごホリックの落書きと苦情からまたスイートタイムで寝起きしている。

啓輔くんも同情心から、ってあたしは同情されたの？
この人の質問に答えられない……
そういえば宿泊費結城さんから請求されていない…
夏からだと結構な金額になりそうな…

『答えられないの？…啓輔くん馬鹿なのか弱い者を放っておけないから…オーナーっていうけどこの人を泊まらせて自分の首を絞めてなければいいけど』
彼女は手を口元にやりニヤリと笑みを浮かべるが目は笑っていない。

『結城さんが馬鹿だなんて謝ってくださいっ、そして今までの宿泊費は払うつもりです』
奈々美は両手を握り両足は少し開き言うなら来いという感じだろう。

その時建物から馬鹿と言われた本人が出て３人を交互にみる。
『何をしているのですか？ホテルに入る階段を降りた所に居たらチェックインをするお客様に迷惑です、かすかに声が聞こえていました、翔子…いつも優しい君がらしくない言葉…希美ちゃんも帰りたがっているし子供にはもう寝る時間だと思うね、奈々美もコソコソと隠れているから議論が始まるんです』
馬鹿だと言われた結城は駐車場の方を指し示す。

『普通はこんな風じゃないの、この人が喧嘩越しにね…だからきつくなってしまったわ、あなた名前なんて言うの？』
翔子は結城に取り繕い奈々美に今更手を差し出す。

『言わなければいけないですか？一度あなたには会っているし道端でも偶然出くわして…名前なんてどうでもいいわ』
階段を駆け上がりフロントへ手を差し出す奈々美、呆気にとられていた従業員が慌てて鍵を差し出す。

恥ずかしいっ！恥ずかしいっ、恥ずかしいっっ
今の結城さんに聞かれていたのかしら？…

エレベーターに乗り込み２０を連打し息を吸う。

毎日が退屈とかゴロゴロに飽きたとか言っていた罰なのかしら…
翔子さんと出くわすなんて想像してなかった…
普通がいい、退屈な毎日でいい…

ドアを閉め寄りかかりまた息を吸って平静を取り戻そうとしていた。
シャワーを浴び髪を乾かしリビングでテレビをつけぼんやりと画面を見る、動揺しているらしい。

あの時どうして結城さんが馬鹿だと言われカッとなって言い返したの？……