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第6章 アイツ

「さ、できたぞー」


テーブルに料理を並べて
真琴を呼び
今日の晩餐がはじまった。


「うわっ、旨そう…」


「二十歳になった祝いだ。
ビールでも飲んでみるか？」


「はい！飲みます飲みます！」


新しいオモチャを貰ったみたいに
真琴はハシャギ
俺の注ぐビールを
キラキラした目で見つめた


「さ、飲むぞ！」

「はい！」

「カンパーイ！！」


真琴は
躊躇うことなく
ビールを飲み

「やっぱ苦いっすね」

と笑った


まぁ、友達と
酒飲んだりしたこともあって
今日が初めてじゃ
ねーんだろーな


俺もアイツの部屋で
高校生の頃
コソコソ飲んだりしてたもんな…

アイツも酒が好きで
この部屋でも
よく飲んでたっけ


真琴も酒が強いのか
麻婆豆腐や餃子を食いながら
ゴクゴクビールを飲み
少し饒舌になったのか
仕事の話や田舎の話をした


「向井さん
ずっと気になってたんですけど
それ…なんですか？」


俺がビールをやめて
ジンを飲み始めると
真琴は俺のロックグラスに興味を示した


「ジンのロックだ」


「美味しい？」


「俺は美味いけど
お前にはまだ早い。
アルコールも強いからな」


「ふーん…
向井さん、ココって
誰かと住んでたんですか？」


「え？」


なんだよ急に


「そのロックグラスも
ビールグラスも
他のものもココには
なんだって二つあるから
同棲とかしてたのかなーって」


「あー…住んでたけど
同棲じゃねーよ。
高校の時の同級生が
転がり込んでたんだ」


待てよ


同棲だって
言った方がよかったか？