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君を好きにならない
第6章 アイツ
え?


お前
グラス持たないのか?


酔ってんのか
真琴は自分でグラスを持たず
俺が持ってるグラスへ
顔を寄せてきた


な、なんだよ


俺を
誘ってんのか?!!

と、思うほど
その様は
妙にいやらしい


そして真琴は
グラスに唇が当たりそうになると
ちょっとニヤけて舌を出し
グラスのフチをひと舐めして
俺を見上げた


「…っ…」


俺も酔ったのか
そんな真琴を見てると
頭がクラクラしそうだ


真琴は
そんな俺を見つめたまま
薄い唇を
グラスに触れさせ

目で訴えた


「飲みたい」…と。



あっ


このシーン



俺は
今日チェックした小説の中に
似たようなシーンがあったことを
思い出した


確か…

後輩が
舌を出して笑うと
先輩は飲んでた酒を
後輩の口元に持っていき
半ば無理やり飲ませてたんだっけ


それで酔った後輩は
その後眠り始め


先輩はその後輩に舌を…



「一口だぞ?」


そう
優しく真琴に声をかけると


真琴は
目を閉じてうなずいた


「…ん…」


目を閉じたままの真琴が


愛おしい


ゆっくりグラスを傾け
真琴に酒を流し込むと
真琴は
また少し顔をゆがめて
グラスから唇を離した


ジンで濡れた
薄い唇

酔って力無く
わずかに開けたままの間から覗く
赤い口内


酔った勢いで
キスをしたら


真琴は

どうするだろう…



「も、無理…」

真琴は
そう呟くと

目を閉じたまま
ゆっくりとソファに身体を沈めた
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