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秘めごと
第3章 蜜蜂
暖かな春の日差しに、俺は一人億劫な気持ちになりながら電車に乗っていた。
昨晩パンクしてしまったバイクを渋々アパートに置き去りにして、ゼミに出席するためだけにこの早い時間に欠伸を噛み殺して鉄の箱に詰められている。
風の吹き抜ける隙のない車両で、俺は一人かなり息苦しい想いをしていた。
駅に着いてまた人が降りて乗る。それを繰り返して。
うんざりする都会の車両は窓の外さえ視界に映す余裕さえなくされる。
プシュゥゥ―――…
また駅について、誰かが乗ってくる。
黒髪の少女。
別段とりわけて美人に感じるわけでもないが。
彼女の持つ雰囲気に一瞬目を奪われた。
血色の悪いともとれそうな色白の肌は、黒髪に隠れて、ますます日の目をみない。
薄い桜色の唇が妙に色っぽくて、ただ肌を露出するよりよっぽど艶かしいような、彼女を見るだけで背徳的な気分に落ちた。
目が離せなくて、ただじっと、その生気のない後ろ姿を眺めていた。
痴漢から彼女を助けて、初めて彼女の名前を聞いた。
何も知らない、何色にも染まっていない君は
ただ俺には眩しくて
ただ一瞬
グチャグチヤに汚してやりたくなった