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嫌いじゃなかったの!?
第9章 8ページ目。
そんな私の思い悩んだ顔に気づいたのか、凌は背後から私を抱きしめて、
「俺は杏子が幸せになってくれたらいいんだ。」
と言った。
全てを見透かしているかのような、そんな事を。
「!?」
私がにわかに驚いていると
「背中のキスマーク。それと首筋の。いつか、それを話してくれる日がくると信じてるから。俺は」
そう言って私の手を取って歩き出した。
温かくて大きな手が私の弱々しい手を包む。
ザワザワと騒いでいた心は凌の温かさで落ち着きを取り戻した。
今日もまた1日が始まる。
私に植え付けられた不安の種はだんだんと成長している。
夏はもうとっくに来ていて、8月はすぐそこ。
これほどまでに時が止まる事を願ったことがあっただろうか。
時が戻る事を願ったことが。