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嫌いじゃなかったの!?
第10章 9ページ目。
私はどれほどの間涙を流していただろうか。
嗚咽を漏らしてまで、とまではいかないが、ずいぶん長い間、鼻をすすりながら泣いていた。
アイメイクなんて残ってないだろう。
松田さんにはたくさん迷惑をかけてしまったなぁ。
私はようやく泣き止んで顔を上げた。
散々な、悲惨な顔だっただろう。
でも、松田さんは、微笑みを浮かべて
「いい顔してるね」
と言った。
いやまぁ、「ひどい顔だね」っていうのを、「ある意味いい顔」っていうニュアンスで言ったのかもしれないが、
ここは、「すっきりした顔だね」とか、そういう意味で捉えておこうと思う。
なんせ今は気分がいいんだ。
もし「ひどい顔だね」なんて意味だったとしたら、わかっていたことではあるけれど、改めて突きつけられるのは辛い。テンションが下がってしまう。
うん、それでいい。
自分自身でも思う、肩の荷が降りたというか、気持ちが楽になったというか、決心がついたというか
なんにせよ、白黒はっきりしたのだ。
勝ち負けとかじゃなくて、どちらが好きか、という白黒が。
だから、すっきりとした顔をしているのかもしれない。
憑き物が落ちた、そんな顔。
また、私は心から笑えるだろうか。
他愛のないことで。
いや、分かりきったことだ。
笑えるに決まってる。笑えないはずがない。
好きな人とだったら、何をしても面白いし、
心を許した幼馴染だったら、何をしても楽しい。
「俺は、杏子ちゃんと古川先輩と凌、全員が幸せになって欲しいなぁ」
どう転ぶかわかんないけどね、と、松田さんは言った。
「全員を幸せにするのなんて、無理なんです。でも全員を不幸にさせないのはできるんじゃないかって、思います。」