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セカンドラブ
第5章 ラ
夜は毎日、私が寝た(フリの)後に「しおり」と呼んで
抱きしめてそっとキスをする。

主任が私を「しおり」と呼ぶのはその時だけ。
主任は愛しそうに優しく優しくその名を呼ぶ。

優しい主任に好きという感情が芽生え
主任が愛している、5年後の私に嫉妬する。

仕事ではしっかりしている主任が生活面は本当に苦手そうで
そのダメな面を奥さんである私にだけ見せていたというのも
母性本能を刺激した。

「主任を好きになる運命なのかな」

記憶がなくなる前の、幸せそうな私たちの写真を見るたびに
嬉しさと、幸せと―――・・・嫉妬が入り混じる。

主任が愛しそうに目を細めて見つめている相手は私であって私じゃない。

一体私はどんな恋愛をして
主任にプロポーズされたのか。
そしてどんな決心で会社をやめたのか。

人生の岐路をまったく思い出せない。

そのジレンマに落ち込んで歯がゆくなる。

自分が発信していたブログを見れば
幸せそうに主任のことを惚気ていた。

それに繋がっている同期はひやかしたり、うらやましがったり。

このブログは本心なのかな。
仕事をやめて3年。
今から5年後の私は1ミリも後悔していないのかな。

胸がザワザワする。

あんなに必死になってプレゼン準備をしていた村上物産に賭けていた
仕事への情熱はどこに行っちゃったんだろう。

私は世間から置いて行かれたような気がして怖くなった。
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