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エリュシオンでささやいて
第4章 Bittersweet Voice
「……。やだといったら?」
そんなことをされたら、あたしの封じた気持ちはどうなるんだろう。
「言わせねえよ。〝嫌わないで〟と言ったのはお前だ。だから……嫌っていねぇところを見せる」
早瀬はそう言うと、腕の中にあたしを入れて、ベッドに横になった。
「でも好きでもないのに」
そんな恋人みたいなこと。
「……っ、そんなのしてみねぇとわからないだろう!?」
「な、なんで怒る……「お前が悪い」」
そうぷんふんしながらも、腕の上にあたしの頭を乗せようとする。
「あの、枕がある……」
「駄目だ。お前の頭は、俺の腕の上なんだよ。もういい加減、わかればいいのに」
そう言いながら、早瀬はあたしの唇を奪った。
「……お前、唇まで気持ちいいなんて、反則」
「……な、なにそれ……っ」
出す言葉は、再び早瀬に奪われて。
「忘れないように。キスする」
「なにを?」
「嫌わないでと、お前に言って貰えたこと。キスしたいとお前が言ったこと。……悪いけど俺、つけ込むから」
「つ、つけ……」
だけど、確かにどれもあたしが言った言葉だ。
「キ、キスは、さっきのお風呂場限定ということで……」
「却下。死ぬほどキスをして、お前に刻むよ。お前の中で、いつでも俺が再生できるよう……」
「ぅんん……っ」
夜景が見える室内で、早瀬の官能的なキスが始まった。
やがて足を絡ませ合い、手を繋ぎ……身体は正直に早瀬を求めて、早瀬の身体も求めてくれていたけれど、
「俺は、セックスがしたいわけじゃねぇんだよ」
なにやらいつもとは真逆な意味不明なことを唱えながら、あたしを抱かなかった。
代わりに、キスの雨を降らせて唇がタラコになるかと思われた後、あたしは意識を手放し、早瀬に抱きしめられるようにして眠りに就いた。
「なぁ、少しは俺のこと、好きになってくれているって思っていいか? 少しは、男として意識してくれてる?」
やがて早瀬の声も、
「俺、お前の隣にずっと居たいんだ。消えたくねぇんだよ。だけど……。駄目なのかな、こんなに好きなのに傍にいることは。こんなに好きなのに、一緒に音楽をすることは。……もう少し、お前の声を聞きたいのに……。刻まれたキスで縛られるのは、俺かもしれねぇな……」
夜の闇に溶け、寝息に変わった。