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エリュシオンでささやいて
第4章 Bittersweet Voice
両想いになれなくてもいい。
恋愛の意味で愛されなくてもいい。
あたし仕事頑張るから。
あなたの人生のどこかで、あたしを必要として欲しい。
……性処理でもいいや。
性処理でもいいから、あたしを捨てないで欲しい。
あたしに背中を見せないで。
……キスは止まらなかった。
のぼせてしまったあたしに、慌てて早瀬が抱き上げ浴室の外に出る。
コーナーになっているらしい室内。
夜景の見える窓が、ダブルベッドに迫っている感じがした。
「部屋、いいところをとれなくてすまない」
ベッドに腰掛けるあたしに、早瀬は冷蔵庫から水を取り出して渡してくれた。こくこくと水を飲んで身体の温度を下げるあたしの髪を、早瀬はドライヤーで乾かしてくれた。
あの王様が、まるで召使いのようだ。
鏡で見る……白いタオル地のバスローブを羽織る早瀬は、筋肉がついた胸元をはだけて、とてもセクシーで。
鏡の中で目が合うと、早瀬は微笑んだ。
「そんなじっと見られたら、照れる」
……あたしと早瀬の仲は、どれだけ続くのだろう。
こんな穏やかな時間は、これで終わりだったりして。
そんなことをぐちゃぐちゃ考えるあたしの横に、自分の髪も乾かしたらしい早瀬がどかりと座る。
「……寝よう。起きてたら、色々と俺がやばくなる。……寝てもやばいだろうけど」
「え、やばいって?」
すると早瀬が頭突きをしてくる。
「俺は男なの! 抱きたい女がいるのに、抱けないから大変なの!」
「………」
「明日、抱ける? あ、会食入ってたな……。だったらその次の土曜日」
「多分、生理」
「……っ」
なんでそんなにショックな顔をするんだろう。
「女なら仕方がないんだけど。そんなにしたいなら、他の「俺はお前以外は抱く気、ねぇから」」
「っ……」
そういう、思わせぶりがあたしには辛いよ。
「次は、前から繋げる。お前の声を聞きながら、お前の顔を見てキスしながら、セックスしたい」
真摯な顔で言われて、少し狼狽してしまった。