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エリュシオンでささやいて
第1章 Silent Voice


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「柚――、もう俺、限界。痛かったら、俺の肩を噛んでいいから。優しく出来なかったら、ごめんな……」

「……須、王……っ」




 高校3年の時――。

 音楽室のグランドピアノでいつものように練習をしようとしたあたしは、校内一の美男子と噂される隣のクラスの男子が、音楽室でピアノを弾いているのを見た。

 それは優雅ともまた違い、両手の指が休む間もなく忙しく動き回り、鍵盤を叩きつけるような激しい曲で、ジャズの旋律にも似た……ニコライ・カプースチンが作曲したピアノ曲、『8つの演奏会用練習曲 作品40-3「Toccatina(トッカティーナ)」』。

 それを軽々とやってのけた男子に、あたしは思わず拍手をした。

 すると、ようやくあたしに気づいたらしい彼は、その整った顔を真っ赤にさせ、小動物のようにふるふると震えた。

 クールなイケメンだとモテていたのは知っていたけれど、あたしが勝手に近寄りがたい人種だと敬遠していた彼は、この曲が好きでスマホに入れて持ち歩き、あたしがいない時に音楽室で練習していたそうだ。

 音符が読めずピアノも習ったこともないのに、我流で耳だけの完全コピーが出来る驚異的な天才ぶりを証明したのだが、彼はあたしが音大に向けて、音楽室で練習していたのを知っていたみたいで、クラシックというものを教えて欲しいと頭を下げた。

 学内ではすれ違うことすらないあたし達は、放課後の音楽室でこっそり会って、ピアノに留まらず音楽談義を繰り返して数ヶ月。

 彼の知る世界は、クラシックしかしらないあたしの世界では刺激的で、急速に彼に惹き込まれていく自分に気づいた。

 だが好きだと淡く自覚しただけだったある日、隣で連弾中、突然指が止まった彼に訝かり視線を絡ませれば、苦しそうな顔で唇を奪われ、あとはなし崩しのように、最後まで彼に抱かれて。

 重ねた肌の熱から、あたしは彼に対する愛がかなり育っていたことを知った。

 窓から差し込む茜色の夕陽に照らされた彼の、あたしを見る……男の情熱的な眼差し。

 あたしの名前を切なく呼ぶ彼の声に包まれながら、彼に愛されているのだと感じれば、破瓜の痛みすら幸せだと涙しながら、共に身体を揺してひとつになった――。

 
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