この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
  

「俺、ツノがない漢字って初めて知った!」

「その鬼子母神と柘榴に関係があるんですか?」

 あたしの質問に裕貴くんが答えた。

「あ、そういえば鬼子母神堂の仏像に手にしているのは、柘榴だとか聞いたことがあったな」

「へぇ、なんで鬼子母神に柘榴なんだろう」

 早瀬がにやりとして言う。

「俗説によると柘榴は人間の肉の味がするらしい。だから食えなくなった子供の肉の代わりに食べていたとか。そうなれば、匂いなんてないように思えるよな?」

 早瀬の視線を受けた朝霞さんは、苦笑した。

 ざわざわ、ざわざわざわ。

 想像しちゃっている時に、棗くんがお野菜とお肉を運んできた。

「こちらのお肉は追加用になります」

 テーブルに置けない分の野菜は、端に座る早瀬の横に、半球状の蓋付きの大皿が置かれた。 

 せっかくのお肉なのに、タイミング悪!!

「俗説がそれなら、通説はなんですか?」

 しかしそう思っていたのはあたしだけだったようで、女帝が話を再開させれば、朝霞さんが答えた。

「柘榴の実の中には沢山の実があり、たくさんの種が詰まっている。そこから豊穣や多産をもたらすものとされているらしい。ただし、ギリシャ神話では、不吉な象徴みたいだね」

「あ……ハデスの妻ペルセポネーも誘惑には勝てずに、冥府の食べ物を食べてしまったから、冥府にいないといけなくなったんでしたっけ。確かに不吉かもしれませんけれど」

 女帝もギリシャ神話を知っているらしい。 

「しかし、柘榴を食べたからこそ、彼女は冥府での時間を過ごしてハデスを愛した。悪いものばかりではないかもしれないよ?」

 朝霞さんにエリュシオンのハデスこと早瀬が言う。

「しかし彼女はハデスの子供を産んでいない。これは吉と言えるのか?」

「死せる者の世界では、新しい命は必要がない。誰もが、ハデスまでもが、冥府の掟に従っていただけだ」

 朝霞さんが言う。

「そう。ひとの命すら認めないのが、冥府〝エリュシオン〟だ」

 早瀬は黙り、じっと朝霞さんを見ている。

 なんでハデスの話でふたりはこんなに真剣なのだろう。
 なんでハデスの話になったっけ。
 
/1002ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ